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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

「金橋君は営業でしょ。だから、部長ともよく一緒に仕事するじゃない。必然的に鹿田さんとのことも気づいたんですって。いつだったか、退社時間間際に急に鹿田さんが営業部に現れて、二人してそそくさといなくなったそうよ」
「でも、それだけで愛人関係にあると決めつけるわけにはいかないでしょう」
 実里が指摘すると、ひかるは笑った。
「でも、その噂って、実はもう数年前から社内では知る人ぞ知るらしいわよ」
「そう―」
 実里は気のない様子で相槌を打った。
 今の実里には鹿田さんが営業部長の愛人であろうがなかろうが、どうでも良い。
 それよりも気になることは幾らでもあった。まず恋人潤平のことだ。あの恐怖の夜―溝口悠理にレイプされた四月半ば過ぎ以降、潤平とはずっと逢っていない。
 四月から五月の初めてかけては、潤平の方が忙しかった。いよいよニューヨーク出向が本決まりになり、仕事の引き継ぎなど多忙を極めているらしい。
 実里は不安だった。潤平にはまだプロポーズの正式な返事をしていない。なのにニューヨーク行きが決定したというのは、何を意味するのだろう。当初、ニューヨークに行くためには既婚者でならなければならないという条件が付いていたと聞いた。
 もしかしたら、潤平は実里が彼の求婚に対してNoと言うはずがないと自信と確信を抱いているのかもしれない。
 実里自身、確かに今は潤平のプロポーズを受けても良いかもしれないなどと考え始めていた。それは彼には申し訳ないけれど、潤平への気持ちが強まったというよりは、あの夜の出来事―悠理に陵辱の限りを尽くされた―がかなり影響しているだろう。
 溝口早妃が死亡したことで、実里は期待していた新規プロジェクトからも外された。実里の不名誉な噂が主要メンバーには不適切ということだったのだから、もしかしたら、ここら辺で会社を辞めた方が良いのかもしれない。会社側もそれを期待しているのではと思えなくもない。
 長年温めていた夢も失い、後はただ受付嬢の仕事をするだけ。別に、若さとそれなりの外見があれば、誰でもできる仕事だ。更に二十七歳という年齢を考慮すれば、若さと外見が武器になるのも後わずかにすぎない。

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