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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

 やがては受付嬢からも外され、今度は資料室配属にでもなるのだろう。資料室というのは会社関連のあらゆる資料が保管されている部署ではあるが、現実に〝資料室行き〟を命じられれば、それは永遠に出世コースからは外れたということを意味する。ゆえに社内では資料室配属になった社員を〝島流し〟と呼んでいた。
 そんな屈辱を受ける前に、こちらから身を退くべきなのは判っていた。そのためには、潤平との結婚はとてもタイミングの良い理由になるではないか。
 また、あの忌まわしい夜の記憶から逃れたいという気持ちもあった。あの夜を境にして、実里は男性恐怖症に囚われてしまったらしい。会社でも男性社員が側に来ると、忽ち身体が震え始め、顔が引きつる。
 もし偶然にでも相手と身体の一部が接触しようものなら、飛びすさってしまう。そのために何度か怪訝な顔をされたことはあるが、今のところは意思の力を総動員しているため、誰かに気づかれているということはないだろう。
 こんな有様で潤平と結婚して上手くいくのかどうかは判らない。有り体にいつてしまえば、彼に抵抗なく身を任せられるかどうか自信はない。
 しかし、いつまでも今の状態を続けるのも良くはないことも判る。一度は心療専門のクリニックを受診しようかと考えたこともあった。専門クリニックには、そういったレイプを受けた女性たちを対象にカウンセリングを行ってくれるところがあると以前、女性雑誌で読んだことがある。
 しかし、いざパソコンを立ち上げてネットで探しても、現実に受診するとなると尻込みしてしまうのだった。たとえ相手が医師とはいえ、あの夜に体験した怖ろしく屈辱的な記憶を思い出し、誰かに語るというのは酷く抵抗があった。もう、二度と思い出したくもない。
 五月の連休明けに一度、潤平から連絡があった。
―そろそろ例の返事を聞かせて貰いたいんだけど、一度、逢えないか?    潤平
 携帯に並んだ短いメールを見ながら、実里は想いに沈んだ。

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