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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

こんな状態であれこれ思い悩んでいても意味がない。たとえ悠理とのことがなかったとしても、結婚を決める時、女性は色々とあらぬ心配をしてしまうというではないか。これをいわゆるマリッジブルーと考えて、思い切って潤平の胸に飛び込むのがいちばん賢い選択なのだろう。
 結婚なんて、誰でもしていることだ。互いに生まれも育ちも違う者同士が家族になり、長い年月を一緒にやっていくのだから、問題が起きないはずはない。その起こるかどうかも判らない問題を気にすることに、何の意味があるというのか。
 しかし、一方で実里はちゃんと自覚していた。実里の抱える問題は単なる花嫁の憂鬱とは違う、と。潤平は今風の外見とは打って変わり、古い考え方を持っている。だからこそ、八年も交際しながら、実里の頼みを受け容れ二人の関係を敢えてセックスに持ち込もうとはしなかった。
 結婚までの女性の純潔性を重要視しているという点では、今時、かなり珍しいかもしれない。相手が潤平自身ならともかく、他の男に抱かれた女を彼が受け容れるかどうかは判らない。しかも、あの夜、潤平にホテルに行こうと誘われながら、実里は断った。その同じ日の夜に実里はレイプされたのだ―。
 あの時、潤平の誘いに応じていたら、と考えないでもなかった。しかし、やはり、何度、同じ時間に戻ったとしても、自分は彼の求めには応じていなかっただろうと思う。相手にはっきりと身を委ねる覚悟もないのに、生半な気持ちで関係を持ってしまうというのは、実里のポリシーに反する。
 その点、出逢ったその日に深間になっても不思議はないとされる現代の風潮の中では実里も潤平も稀有な変わり種、似た者同士なのだろう。
 後に、その実里の潤平への認識は一八〇度どころか、三六〇度変わることになるのだけれど。
 めぐる想いに応えはない。
 結局、実里が潤平に返信したメールは、ごく素っ気ないものだった。
―ごめんなさい。今は私の方が仕事が忙しくて、どうにもならないの。落ち着いた頃にまた連絡します。         実里
 その落ち着いた頃というのが、いつなのかは実里自身にも実は応えようがないのだ。
「実里、ねえ、聞いてる?」

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