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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

 恐らく実里のように、結婚前には関係を持てない、持ちたくないと考える方が時代錯誤すぎるのだろう。今日日、できちゃった結婚は珍しくもない、日常茶飯事だ。
 しかし、ひと昔前までは、結婚前の娘が妊娠するなどということは、あってはならないことだった。未婚の娘が身ごもるという不祥事が起きれば、その家の者は皆、世間に顔向けができないと小さくなったものである。
 それが、いつのまにか〝結婚前に子どもまでできるとは、更におめでたい喜ばしいこと〟になってしまった。今の時代は、どこの有名ホテルに行っても、妊婦用のウェディングドレスが当たり前のように備えてある。つまりは、それだけ結婚前のセックスが―普及したという言い方には語弊があるかもしれないが―、世間で抵抗なく受け容れられるようになったという証でもある。
 あまりにも考え方、風潮そのものが真逆になったとしか言いようがない。
 しかし、実里の両親、特に父は典型的な昭和の男だから、婚前交渉(大体、この言葉こそが今は使われない)や結婚前の妊娠だなどと聞いただけで、額に青筋が浮かびそうだ。
 実里がいまだに奥手なのは、そういう両親の影響も少なくはないだろう。 
 彼女がまたも考え込んでいると、ひかるの独り言が聞こえてきた。
「彼氏とは一度も寝ていないのに、生理が来ないのも妙だわ。実里は彼氏がいるのに、他の男と寝るようなタイプじゃないし」
 その意味をさして深く考えもせず、実里は微笑んだ。
「今日の帰りに病院に寄ってみるわ」
「私も付き添おうか?」
 親切な申し出には感謝するべきだろうけれど、実里は笑った。
「別に子どもじゃあるまいし、一人で行けるわよ」
 そこで、昼の休憩時間終了のチャイムが鳴り、話は終わりになった。

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