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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

 その日は六月最後の週だった。ちょうど水曜日だったので、午後から開いている病院を探すのはひと苦労したけれど、何とか開いている病院を探し当てることができた。
 その小さな病院は会社からの帰り道にあり、住宅街の一角にそっひりと建っていた。例のフレンチレストランからも近い。
 しかし、ということは、その病院から自宅に帰るにはまたもあの事故現場を通らなければならないということでもある。
 内科の看板を掲げてはいるが、片隅には〝皮膚科・婦人科〟と申し訳程度のように小さく記されていた。
 別に関係ない科なのだと思い、受け付けでは内科受診希望であることを伝え、診療室の前の長椅子に座る。置いてある女性週刊誌を捲っていると、すぐに名前が呼ばれた。
 四十過ぎの医師は背が高く、屈強な体つきをしていたが、眼がね越しの細い眼は穏やかで、この先生ならば安心して任せられそうという不思議な安心感がある。けして愛想が良いというのではない。が、物腰もやわらかく、不思議に感じの良い医師だという印象だ。
 問診と簡単な診察の後、医師は首をひねりながら言った。
「吐き気が続いているのは、いつからですか?」
「六月に入ってからです」
「つかぬことをお訊きしますが、生理はいつ?」
 実里は眼を見開いた。この医師までがひかると同じことを訊く。
 医者だから訊ねるのだろうと、さして疑問にも思わず応えた。
「三月の終わりですが」
 医師は少し考え込むような顔でカルテを眺めていたかと思うと、看護士を呼んで実里に尿検査を受けさせるように言った。
 一旦、診察室を出てトイレに行き、また診察室に戻る。しばらくして医師の許に看護士が戻ってきた。検査の結果が出たようだ。
 医師はまたカルテに何か書き込んだ。
「あの、先生。私、何かの病気なんでしょうか?」
 考え込む医師の表情からして、あまり良い兆候とはいえない気もする。
「いえ、特に病気というわけではありませんが、どうも、入倉さん、妊娠されているようですね」
 刹那、実里の両眼が射るように見開かれた。
「先生、今、何と?」

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