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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

 医師は改めて実里に向き直り、はっきりと言った。
「おめでとうございます。妊娠されていますよ」
 突然、奈落の底に突き落とされたようで、眼の前が真っ白になった。無意識に立ち上がり、目眩を憶えた。ふらつく身体を駆け寄った看護士が慌てて支えてくれなければ、無様に転んでいたに相違ない。
「あ、あの。私」
 身に憶えなんてありません。
 実里が口を開く前に、医師は淡々と告げた。
「妊娠されたのは四月半ばでしょう。今、三ヶ月です。出産予定は来年の一月ですね」
「―」
 烈しい衝撃が実里を貫いた。
 妊娠したのは四月の半ば―。
 医師の宣告がリフレインする。溝口悠理にレイプされたのは丁度、その時期だった。忘れもしない四月十六日の夜だ。
「大丈夫ですか?」
 四十歳くらいの女性看護士が優しく顔を覗き込み、実里は辛うじて頷いた。
 その後、実里は改めて婦人科の診療室で内診を受けた。そこで手のひらサイズの小さなモノクロ写真を渡された。
「これが今の赤ちゃんの様子です。もう、ちゃんと心臓も動いていますし、元気に育っています。このままいけば、来年早々には元気な赤ちゃんが生まれますよ」
 手渡された写真を見ると、確かに子宮の片隅に、はっきりと小さな丸っこいものが見えた。これが赤ちゃんの入っている胎嚢という袋だと説明された。
 また、身体の不調の原因はすべて妊娠によるものだろうと言われた。悪阻が少し烈しいようだが、これも入院治療が必要なほどではないから、処方された薬を服用すれば問題ないだろうとも。
「ここは婦人科なので、基本的にお産は取り扱いません。選択肢としては二つあります。一つは安定期に入る五ヶ月くらいまでは、うちで診させて貰って、それ以降はお産のできる病院に移る方法。もちろん、紹介状を書きますから、それと今までの妊娠経過を記したカルテを持っていって頂きます。二つ目は、ご自分の希望するクリニックがあれば、次回からはそちらで診て貰うという方法ですね。最初から同じ医師、病院で妊娠経過を診て貰う方が望ましいかもしれませんので、どちらを選択するかは患者さんのご希望にお任せします」

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