My Godness~俺の女神~
第5章 ♯Detection(発覚)♯
もう一人の子の方はマスクをしていたから、それはあながち嘘ではないのかもしれない。
「それは大変ね。お大事に」
実里が先輩らしく余裕を見せて笑顔で言うと、丸顔の子がにっこりと笑った。
「先輩もお身体を大切にしてくだぁさーいね。元気な赤ちゃんが生まれると良いですね」
刹那、実里は身体中の血液が逆流するのではないかと思った。真っ青になりながらも気丈に微笑み、〝それじゃあ、お先に〟と彼女たちの前を通りガラスの引き戸を開けて外に出た。
背後で、〝いやだー〟と嬌声が上がり、クスクスと忍び笑いが聞こえた。
耳障りな声を遮断するかのようにピシャリと扉を止めると、一歩外に出た実里の眼を眩しい初夏の陽光が貫いた。
神様はあまりに残酷だと思った。
確かに自分は溝口早妃を車で撥ねた。彼女がそれによって亡くなったのも紛れもない事実である。しかし、ここまでの代償を払うくらいなら、いっそのこと死んで償えと言われた方がはるかに楽なように思えた。
誰かに逢いたかった。このまま一人でいれば、果てのない絶望と哀しみに気が狂ってしまいそうだ。
実里は夢中で携帯電話をバッグから取り出し、潤平の携帯番号を押した。
しかし、潤平は何度コールしても出なかった。まだ仕事が忙しいのかもしれない。それに、今はまだ会社にいる時刻である。彼が仕事中に電話をかけられるのを厭うのは知っている。そんなことも忘れるほど、今の自分は精神状態が不安定なのだろう。
それにしても、自分はつくづく身勝手な女だと思う。これまで潤平から熱心なプロポーズを受けながら返事を渋っていたのに、妊娠が判った途端にこの体たらくだ。
むろん、実里に何の下心もあるはずはなかった。狡猾な女ならば、まだ妊娠初期だから、すぐに潤平と関係を持てば彼の子だと上手く月数をごまかせると考えるかもしれない。
だが、実里はそういう類の女ではなかった。ただ、心が折れそうな絶望のただ中にいる時、いちばん側にいて欲しいと思ったのが潤平だったのである。
「それは大変ね。お大事に」
実里が先輩らしく余裕を見せて笑顔で言うと、丸顔の子がにっこりと笑った。
「先輩もお身体を大切にしてくだぁさーいね。元気な赤ちゃんが生まれると良いですね」
刹那、実里は身体中の血液が逆流するのではないかと思った。真っ青になりながらも気丈に微笑み、〝それじゃあ、お先に〟と彼女たちの前を通りガラスの引き戸を開けて外に出た。
背後で、〝いやだー〟と嬌声が上がり、クスクスと忍び笑いが聞こえた。
耳障りな声を遮断するかのようにピシャリと扉を止めると、一歩外に出た実里の眼を眩しい初夏の陽光が貫いた。
神様はあまりに残酷だと思った。
確かに自分は溝口早妃を車で撥ねた。彼女がそれによって亡くなったのも紛れもない事実である。しかし、ここまでの代償を払うくらいなら、いっそのこと死んで償えと言われた方がはるかに楽なように思えた。
誰かに逢いたかった。このまま一人でいれば、果てのない絶望と哀しみに気が狂ってしまいそうだ。
実里は夢中で携帯電話をバッグから取り出し、潤平の携帯番号を押した。
しかし、潤平は何度コールしても出なかった。まだ仕事が忙しいのかもしれない。それに、今はまだ会社にいる時刻である。彼が仕事中に電話をかけられるのを厭うのは知っている。そんなことも忘れるほど、今の自分は精神状態が不安定なのだろう。
それにしても、自分はつくづく身勝手な女だと思う。これまで潤平から熱心なプロポーズを受けながら返事を渋っていたのに、妊娠が判った途端にこの体たらくだ。
むろん、実里に何の下心もあるはずはなかった。狡猾な女ならば、まだ妊娠初期だから、すぐに潤平と関係を持てば彼の子だと上手く月数をごまかせると考えるかもしれない。
だが、実里はそういう類の女ではなかった。ただ、心が折れそうな絶望のただ中にいる時、いちばん側にいて欲しいと思ったのが潤平だったのである。