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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

 今から思えば、四月末から五月頭にかけて多忙だと言って実里に逢おうとしなかったのも怪しいものだ。
 そのことから考えて、あの肉感的な美女と
深間になった時期というのは、潤平の言うとおり嘘ではないのかもしれない。
「もう良いわ。言い訳なんかしないで」
 実里は首を振った。
 今となっては、もう、どうでも良いことだ。
 潤平があの女と何をどうしようが、既に実里には関係ない。
 実里の中で言いようのない烈しい感情がせめぎ合っていた。自分は心ならずも悠理にレイプされたことに対してあれほど罪悪感を感じた。むろん、潤平に対しての罪の意識があったからだ。望まざることとはいえ、悠理の子を宿して、潤平を裏切ったという気持ちにさえなった。
 しかし、実里が罪に悶々と喘ぐその一方で、肝心の潤平は実里を平然と裏切っていたのだ。少なくとも実里が悠理に犯されたのは実里自身の意思ではない。が、潤平があの女と関係を持ったのは彼が自分から望んだことだ。
 潤平の態度が劣勢に転じたというのは間違いだった。彼は開き直ったのだ。
 すべてを―自分が犯した過ちと裏切りをことごとく実里のせいにして卑怯にも言い逃れようとしている。
 全く、こんな男に八年も自分は何を期待していたのだろう。結婚という甘い夢を見ていた? 長年付き合ってきた情もあったことは否定できない。
 愚かな、なんて馬鹿な私。
 あまりにも馬鹿らしくて、涙さえ出てこない。
 実里は小さく息を吸い込んだ。
 さよなら、何も知らなかった未熟な私。
 甘く儚い幻想を後生大切に宝物のように抱いていた世間知らずの愚かな娘。
 こんな男を好きだと思い込み続けた八年間。
 今こそ判った。
 潤平への想いに足りないと感じていた何か、愛というパズルを完成させるための最後のピースを漸く手にしたのだ。
 それは、真心だった。潤平には最初から真心がなかったのだ。相手に対する誠意と言い換えても良いだろう。
 だから、あっさりと実里を裏切り、あまつさえ、その理由を実里のせいにしようとしている。

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