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My Godness~俺の女神~

第1章 Prologue~序章~

 でも、男なら、誰でも自分の女に風俗の仕事なんてさせたくないのは当たり前。俺は同棲を始めてから二年目にそのことをはっきりと早妃に伝えた。早妃は俺の意を受け入れてくれて、十五歳から十八歳まで続けていた風俗嬢の仕事から脚を洗った。
 俺も早妃と結婚してからは、客と寝るのは一切、止めた。どれだけ金を積まれても、客の誘いには応じなかった。
 それから、俺は更にコンビニのバイトも始めた。早妃も昼間、同じコンビニで働くようになった。俺は普段はホストクラブに行かなければならないし、コンビニのバイトは週末の限られた時間しかできなかった。
 正直、早妃がキャバ嬢をしていた頃より、家計は苦しかった。男なら女の面倒を見るべきだなんて偉そうなことを言っても、二人の生活は俺の収入だけでは賄えないこともあった。そんなとき、早妃は黙って足りない分を出してくれた。
 しかし、早妃が風俗を辞めてからは、それも頼りにはできなくなった。金のことを思えば、正気なら絶対にその気にならないような客相手でも寝た方が良かった。でも、俺はどんなことがあっても、それだけはしなかった。
 俺には早妃がいる。早妃が側にいてくれるだけで、幸せな満ち足りた気持ちになれるから、この世の終わりが来たって、他の女と関係を持つ気にはなれなかった。
 早妃が堅気に戻ってほどなく、俺たちは正式に籍を入れた。結婚式なんてものもやれなかったから、よくチラシに載ってる写真だけの結婚式ってのをやった。別に男はそういうのって、たいして拘りはない。でも、女ってのは、一生に一度だから、ちゃんと形にして残しておきたいものだろうと思って。
 早妃は白無垢、俺は柄にもなく紋付き羽織袴。当日は俺も滅茶苦茶、緊張しまくった。あんまり硬くなってるんで、写真館のおじさんに
―背中つついただけで、前に倒れそうやな。
 と大笑いされた。
 早妃は言うまでもない、めっちゃ、綺麗だった。俺は花嫁さんなんてあまり見たことはない。そんな俺でも、世界でいちばん綺麗な花嫁さんじゃないかと思ったよ。それくらい眩しいくらい綺麗だった。
 今でも早妃は時折、そのときの写真を出してきて、嬉しそうに眺めている。早妃が幸せなら、俺も幸せだ。こうやって、その気にもならないおばさんの相手するのも我慢できる。

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