光の輪の中の天使~My Godness番外編~
第1章 出逢いはある日、突然に
「ちょっと待っててね。バッグの中にバンソーコーがあったかどうか見てくるから」
実里がベンチまで引き返してバッグを手にした時、また理乃の泣き声が聞こえた。小さなため息をついて、振り返ろうとしたその時。
低い声が理乃の泣き声に重なった。
「どうした? 転んだのか」
聞き慣れた夫の声ではない。しかし、どこか聞き覚えのある声だ。
実里は急いで娘の許に戻ろうと振り向く。
刹那、あっと叫び声を上げるところをすんでのところで飲み込んだ。
すっきりとした長身に茶褐色のさらさらとした髪、どこか俳優の向井理を思わせる端正な顔立ちは少しも変わらない。
ただ、元々無駄な肉などついていない体躯は肉体度労働でもしているのか、幾分筋肉がつき、顔は陽灼けして精悍さを増している。今風にいえば、ワイルドになったとでも言えば良いのだろうか。
あの頃は少し長めだった髪の毛はきれいに刈り込まれ、それが彼の野性味を余計に際立たせていた。
そう、溝口悠(ゆう)理(り)、この男は四年前、実里をレイプした憎い男のはずだった。実里が彼の妻早妃(さき)を車で撥ねてしまい、それを恨みに思った悠理が復讐を企み、実里をレイプしたのだ。
あの事故は誰にも防ぎようのない不幸な出来事であった。しかも、早妃の方が先に実里の運転する車の前に飛び出してきたのだから。しかし、悠理は周囲の宥めるのもきかず、実里を一方的に恨み、執拗に尽き回したあげく、会社帰りの実里を襲い、陵辱の限りを尽くした。その末に身ごもったのが理乃であった。
理乃が生まれてから四年、実里は悠理の親友でありホスト仲間でもあった柊路と結婚し、以前と同じ生まれ故郷の町で暮らしている。
柊路はホストを辞めてからは自動車整備工場で働き、整備士の資格を取るべく見習いとして一から学んでいた。実里が柊路のプロポーズを受け入れたのは、理乃が生後半年になった頃のことだ。
―贅沢はさせてやれないかもしれないけど、一生、実里ちゃんだけだし。理乃ちゃんの良い親父にもなれるように精一杯努力するから。俺にもチャンス、くれない?
いかにも柊路らしいプロポーズは、今になって思い出しても涙が出た。
実里がベンチまで引き返してバッグを手にした時、また理乃の泣き声が聞こえた。小さなため息をついて、振り返ろうとしたその時。
低い声が理乃の泣き声に重なった。
「どうした? 転んだのか」
聞き慣れた夫の声ではない。しかし、どこか聞き覚えのある声だ。
実里は急いで娘の許に戻ろうと振り向く。
刹那、あっと叫び声を上げるところをすんでのところで飲み込んだ。
すっきりとした長身に茶褐色のさらさらとした髪、どこか俳優の向井理を思わせる端正な顔立ちは少しも変わらない。
ただ、元々無駄な肉などついていない体躯は肉体度労働でもしているのか、幾分筋肉がつき、顔は陽灼けして精悍さを増している。今風にいえば、ワイルドになったとでも言えば良いのだろうか。
あの頃は少し長めだった髪の毛はきれいに刈り込まれ、それが彼の野性味を余計に際立たせていた。
そう、溝口悠(ゆう)理(り)、この男は四年前、実里をレイプした憎い男のはずだった。実里が彼の妻早妃(さき)を車で撥ねてしまい、それを恨みに思った悠理が復讐を企み、実里をレイプしたのだ。
あの事故は誰にも防ぎようのない不幸な出来事であった。しかも、早妃の方が先に実里の運転する車の前に飛び出してきたのだから。しかし、悠理は周囲の宥めるのもきかず、実里を一方的に恨み、執拗に尽き回したあげく、会社帰りの実里を襲い、陵辱の限りを尽くした。その末に身ごもったのが理乃であった。
理乃が生まれてから四年、実里は悠理の親友でありホスト仲間でもあった柊路と結婚し、以前と同じ生まれ故郷の町で暮らしている。
柊路はホストを辞めてからは自動車整備工場で働き、整備士の資格を取るべく見習いとして一から学んでいた。実里が柊路のプロポーズを受け入れたのは、理乃が生後半年になった頃のことだ。
―贅沢はさせてやれないかもしれないけど、一生、実里ちゃんだけだし。理乃ちゃんの良い親父にもなれるように精一杯努力するから。俺にもチャンス、くれない?
いかにも柊路らしいプロポーズは、今になって思い出しても涙が出た。