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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 それどころか、にこにこ顔で見送っていた癖に。


「だって、宵の嫌がる顔がおもしろかったから」

「結局そこか、こら」


 晃だって楽しんでいたのなら、今さらそんな苦情を言われても困る。祭はもう終わってしまったのだ。


「でも、もっと独占したかったのは本当」


 晃の声は夜に溶けるくらいに甘い。

 自分だってこの鬼ごっこを楽しんでいたくせに、今さらそんなことを言うのは本当に勝手だと思う。けれど、独占したいという言葉を、嬉しく思ってしまうのもどうしようもないことで。

 宵は晃から、強引に手を引っ込めた。唾液で温められた指が、外気に晒され急激に冷たくなっていく。

 もう一方の手で舐められた指を握りながら、宵は晃から視線を外し、ぽつりとつぶやいた。


「今さらなんだよ、それ。だったらあんなまどろっこしいゲームしてないで、さっさと捕まえてくれりゃ良かったのに。そうすりゃ、二人で屋台をまわることだってできたじゃねーか」

「俺と一緒に文化祭見てまわりたかったんだ」

「……また、そういう言い方しやがるし」


 宵は憮然と言い返す。

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