淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④
第3章 父の過ち
女が男二人を二股かけていた、つまり、どちらとも関係を持っていたのだ。あの時、玉彈はその女中の名前をはっきりとは口にしなかったけれど、確か、別の女中たちの話では〝スンジョン〟と名前が挙がっていた。
それが、今から半年ほど前のことだ。玉彈はその女中について〝柳家に上がって半年ほど〟と言っていたから、間違いなくスンジョンだろう。
こんな醜聞が母の耳に入れば、スンジョンは間違いなく暇を出され、屋敷を追い出される。執事はそのときに限り、母には内分で事を穏便に納めたらしく、スンジョンは厳重な訓戒を受けるだけにとどまった。しかし、父にとっては、半年前の騒動の際、スンジョンが屋敷から追放されていた方が良かったのかもしれない。
春泉は乳母の話を聞くともなく聞き、世の中には奔放というか、性的なことに関して全く倫理観の欠如した娘もいるものだと嫌悪感を憶える一方、半ば呆れたものであった。
そんな娘であってみれば、女好きの主人の眼に止まるようにわざとふるまったかもしれない。スンジョンが千福の前で、〝何も知らない初な生娘〟を演じて見せ、千福の気を引こうとしたことまでは春泉は想いも及ばなかった。この時、スンジョンは千福が遊び慣れ、男を知り尽くした蓮っ葉な娘よりも男女のことは何も知らぬような純情さを好むと計算し尽くした上で、処女のふりを装ったのである。
いや、この際、スンジョンから父を誘ったかどうかなど、どうでも良い。あの女中はまだ十五歳、春泉よりも更に一つ年下なのだ。
刹那、身体を悪寒が駆け抜けた。
一旦うつむいた春泉は弾かれたように顔を上げ、二人に背を向けた。
物置を飛び出ると、自分の部屋に向かって駆け出す。
涙が堰を切ったように次々と溢れ出し、止まらなかった。何故、どうしてという想いが頭の中をぐるぐると駆けめぐる。
十五歳の少女を相手に荒淫に耽る父の姿を考えただけで、その場で吐いてしまいそうだ。
千福はその日の中に、急用が入ったとかで出かけていった。いつもなら屋敷を出る前には必ず春泉の部屋に立ち寄ってゆくのに、今回はまるで逃げるようにこそこそと何も告げずに出ていった。
それが、今から半年ほど前のことだ。玉彈はその女中について〝柳家に上がって半年ほど〟と言っていたから、間違いなくスンジョンだろう。
こんな醜聞が母の耳に入れば、スンジョンは間違いなく暇を出され、屋敷を追い出される。執事はそのときに限り、母には内分で事を穏便に納めたらしく、スンジョンは厳重な訓戒を受けるだけにとどまった。しかし、父にとっては、半年前の騒動の際、スンジョンが屋敷から追放されていた方が良かったのかもしれない。
春泉は乳母の話を聞くともなく聞き、世の中には奔放というか、性的なことに関して全く倫理観の欠如した娘もいるものだと嫌悪感を憶える一方、半ば呆れたものであった。
そんな娘であってみれば、女好きの主人の眼に止まるようにわざとふるまったかもしれない。スンジョンが千福の前で、〝何も知らない初な生娘〟を演じて見せ、千福の気を引こうとしたことまでは春泉は想いも及ばなかった。この時、スンジョンは千福が遊び慣れ、男を知り尽くした蓮っ葉な娘よりも男女のことは何も知らぬような純情さを好むと計算し尽くした上で、処女のふりを装ったのである。
いや、この際、スンジョンから父を誘ったかどうかなど、どうでも良い。あの女中はまだ十五歳、春泉よりも更に一つ年下なのだ。
刹那、身体を悪寒が駆け抜けた。
一旦うつむいた春泉は弾かれたように顔を上げ、二人に背を向けた。
物置を飛び出ると、自分の部屋に向かって駆け出す。
涙が堰を切ったように次々と溢れ出し、止まらなかった。何故、どうしてという想いが頭の中をぐるぐると駆けめぐる。
十五歳の少女を相手に荒淫に耽る父の姿を考えただけで、その場で吐いてしまいそうだ。
千福はその日の中に、急用が入ったとかで出かけていった。いつもなら屋敷を出る前には必ず春泉の部屋に立ち寄ってゆくのに、今回はまるで逃げるようにこそこそと何も告げずに出ていった。