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日曜日の夜は

第1章 指輪

「そんなこと考えてんだ」

 言葉と裏腹に、彼女と同じ気持と知って、うれしくなった。

「だって」そう言って頬をふくらませる。

 こみ上げる感情をおさえきれなくなりそうだ。

「僕だって」

 言いかけてやめた。すべてをこわしてしまうことにおびえた。それよりも、ずっと君を見ていたい。一緒にいたいんだ。

「来週、部屋とっとくよ」

「……うん」

 憂いがただよう彼女の顔に、かすかな笑みがこぼれる。

「じゃあ、楽しみにしてるね」

「ああ」

 手探りで彼女の手を握りしめた。ひやりとした細い指にはめられた、リングのかたさを感じて、とっさに手に力が入った。

 もう後戻りができない。このまま奪って逃げたかった。

 窓のさきには、ただ漆黒の闇がひろがり、すべての色はない。悲哀の色に染められた道を見て、わたしは眉間にしわをよせた。夜がつづけばいいと、本気で思った。

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