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《Eternal bells…… 》

第29章 それぞれの秘密事

久し振りに晴れたある日、、


ダダダッ…


「ケホッ!…ケホゲホッ…ゲホゲホゲホッ!
……はぁはぁはぁ…」


(私はやはり……労咳なのか……クソッ…)



路地裏で座り込む浅葱色の羽織…
そこに…




「医者には行ったんか…?」


総司が顔を上げると笠を被った栄太だった…




ー!!!

「…はぁはぁ…貴方、捕まりに来たんです
か…?ゲホゲホッ…」

総司が無理に立ち上がろうとすると…


「早く医者に診てもらえ…お前を心配
しちょる奴も居るんじゃけのぉ…」

平気で背中を向け立ち去る…


「待ちなさい!…はぁはぁ…
逃げるのなら斬るぞ!」

息を切らしながらやっと立ち上がり刀に
手をかけると、栄太は振り向いた…



「お前は…何の為に僕を斬るんだ…?
会津の為か?徳川の為か?…そんな小さい
事の為に今死ぬ気はないけぇ。僕が死ぬ
んは国の為だけじゃ…」


真っ直ぐ総司を見据えて言った。
そして再び歩き出す栄太…
総司は刀から手を離した…



「待てっ…はぁはぁ…麗美に…病を…」


「麗美にその病は移らん…」


栄太は通りに消えて行った…



力なく座り込む総司…

「ハハハッ…神様は不公平ですね…はぁ…
あの人が羨ましいです…」


麗美に愛され、強い志と自信に満ち溢れ
た栄太…自分には無いものを全て持って
いる男…それに対して剣しかない自分…
確実に病に侵されている身体…


(私が剣を持てなくなったら…何が残る
と言うんです…近藤さんの為に…私は
まだまだ戦わなくてはいけないのに…
どうして私が労咳になんか……)





その日の夜中、、



総司は包みを手にして、ずっとそれを
見つめていた…それには沖田総司様とだけ書かれていて、中には朝鮮人参が入っている。
麗美が愛次郎に頼んだものだった…



(やはりこれは麗美が…でも、どうして
労咳だと知っているんでしょう…?
まるで私の全てを知っているかのようだ…
芹沢さんの時も…。不思議な人です…)




総司は包みを手に部屋を出た…
そして足音を立てず気配を消しながら
台所へ向かったのだった…

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