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第15章 俺はきみほど愛していない
「俺に何か用事?っていうより、ヒロくんが俺に会いに来るなんて、要件はひとつしかないんだけどさー」
ひらひらと左手を振りながら千尋を見下ろすその様子には一切の警戒がなく、対する千尋は明らかな殺意を持った目で文芽を見上げている。
そんな千尋の殺意さえ愉快だと言わんばかりに、文芽は飄々とした口調で言葉をつづけた。
「でも俺はきみのこと嫌いじゃないぜ?好きな女の子をどんなことをしてでも守るその信念、すげえかっけーと思うわけよ。この四年間できみが排除した人間の数だけ、あの子は確かに救われてるからさあ。きみがいなかったら、ユーリちゃんとっくの昔にどっかのバカに殺されて――」
止まる気配のなかった文芽の話を妨げたのは、千尋の投擲した三本の投げナイフだった。
が、素早くジャングルジムから飛び降りた文芽には一本も届くことなく、ほどなくしてジャングルジムの柵に衝突しながら落ちるナイフの音が公園に響く。
ちゃっかり悠理の学生鞄も手にして地面に足を付けた文芽は、わざとらしく肩をすくめて「あーあー、こえーな最近の若者って」と軽口をたたいた。