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第15章 俺はきみほど愛していない
「それだろ?きみが今回取り返しに来たものは」
鞄を難なく受け取って安堵の息を漏らしている千尋に、文芽はへらへらと笑う。
途端に目つきを厳しいものへ戻した千尋は、しばらく文芽を睨んでから唐突に目線を逸らし、そのまま相手に背を向けた。
これもいつものパターンだった。
千尋は殺せないとわかっている文芽を相手にしつこく切りかかってはくるが、わかっているからこそ今日はダメだと思えば引き際は潔い。
それでも殺意は消えていないだろう千尋を見送りながら、文芽は地面に落ちているナイフを一本拾い上げた。
「――なんてねー」
そう軽い口調で言いながら、千尋の消えた方向へナイフを投擲した。