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第15章 俺はきみほど愛していない
暗闇の向こうで何かに衝突したのか、ナイフの軽い金属音が周辺に響く。
その間に文芽はまた地面に落ちていたナイフを拾い、同じ方向へと投げつけた。
「相手が邪魔で、それでも殺せないのは俺も同じなんだよ」
変わらない表情でそう呟きながら、ナイフを拾っては投げる動作を繰り返した。
それはすべて千尋の背中があった場所で、彼がその場にいれば間違いなく命を落としていただろうスピードだ。
「ユーリちゃんのことを知らないのはきみの方じゃないか。ただ狂わされてるだけのきみと一緒にしするなよ」
そういって最後の一本を投げつけた後、文芽は真上に上っている月を見上げ、思い出したように恍惚と笑った。
「早くユーリちゃんの血が見たいなあ」
――白いシーツに散らばった鮮血を、ね。