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第5章 戌原西地区の殺し屋


「うんまあ、それに関しては俺からの一方的な愛ってことで流してくれて構わないよ」


 片思いってのはつらいねえ。

 そう全く苦痛の滲んでいないにやけ顔で言いながら、文芽はブランコから立ち上がって悠理のもとにやってくる。

 対照的にスーツ姿の茶髪女性と思しき死体には、まるで始めから存在していないかのように一瞥もくれない。

 その場面に対するミスマッチさに、悠理は憎くてたまらない男の顔を思い出しかけ、寸でのところで飲み下す。

 文芽という男は職業柄、どんなことに関しても目敏い。

 今日そのことに関して何か言及されるのは、さすがの悠理も耐えられそうになかった。

 だから極力いつも通りに振る舞うしかなかったのだ。

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