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第5章 戌原西地区の殺し屋
「なんにせよ入学おめでとう。西地区から女子高校生が出たことなんて、一体何年ぶりだろう」
そう言ってへらりと笑った文芽は、呆れた表情をしている悠理のもとへ一歩足を進めた。
文芽がこうして近寄ってくること自体は決して珍しいことではない。
くだらない言葉を口にしながらいつの間にやら悠理の目の前に立ち、手でも握って血腥い口説き文句を言うのが常だ。
いつぞや北海道へ行こうと言い出したこともあったが、その理由が「ここらじゃ雪に飛び散る鮮血が見られないんだよ。大好きなユーリちゃんにあの鮮やかさを一度見せたいんだ」だったときには頭痛がした。
そしてやたらと過保護な千尋と同じく、文芽が好意を寄せてくる理由も悠理には全く覚えがない。
