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第8章 「俺だけだ」
そこでは世間でいう常識などどこにもなかった。
強ければ人のものを奪ってでも生き延びることができるし、弱ければ全てを奪われてのたれ死ぬ。
もともと体格の良く、体力もあった千尋はそんな奪い合いを何度も重ねるうちに強者となることが増えて行った。
もぬけの殻となった自宅はいつの間にやらすべての窓や扉に施錠がされて住めなくなってしまったことを機に、千尋はとある男から屋根のある廃墟を奪い取った。
そこでの生活は快適には程遠いものだったが、それ以上に自由だという価値があったのだ。
機械に関する知識と技能で表には出せない物品の修理をこなし、その賃金でどうにか暮して行ける。
誰かに気兼ねすることなく行動することができる。
そう、彼なりにそこでの生活を満喫していた矢先に、一人の男が彼のもとを訪れた。