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第2章 彼女なりの安穏とした日々

「八桐さんって、どこから通ってるの?」

 
 それは悠理にとって、今一番厄介な質問だった。

 高校一年生の四月ともなれば出身中学と住んでいる場所を聞かれるのは通過儀礼を言ってもいい。

 新しい友好関係を作るために、そういうお決まりのフレーズを口にしてグループを形成するのが女子というものだ。

 悠理自身も、友達はもちろんほしかった。

 あまりべたべたとした付き合いは苦手だが、絶対に通えないだろうと思っていた高校に進学で来たのだ。

 ――存分に楽しまないと。

 そう考えてはいたものの、住所や家族構成、やっているバイトのことはどうあっても本当のことは話せなかった。

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