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第8章 「俺だけだ」


 何を感じてそうしたのか、それは千尋自身にもわかっていなかった。

 ただ悠理がこんな連中に好きにされるのかと思うと吐き気がした。

 妄想の中で犯されているかもしれないと思うと怖気がした。

 そんな目線を浴びせられているということ自体が耐えられなかった。

 そして、そんな連中は殺しても構わないとさえ感じられた。

 ――あー……妹をもつ兄的な心情?

 息をしているかさえわからない連中を放置して悠理の後を追いながら、千尋はそう考えた。

 このわずかな期間でも彼女へ愛着が湧いてしまったことに内心驚きながらも、それはそれで嬉しいような気がした。

 確かにひとりは自由だ。

 けれど、誰かと親しくなることに嬉しさを感じない人間はいない。

 久しくそれを感じさせてくれた子どもの一人や二人、守れなくてどうするんだ。

 そんな考えだけが、そのときの千尋の中にはあった。

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