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第8章 「俺だけだ」


「悪いなあ、わざわざ送ってもらって」

「別に、いいっすよ」


 あのあと悠理へ声をかけた千尋は、また何かあるといけないからと彼女を永井の事務所まで送り届けた。

 客人用のソファに腰かけている千尋は一人前にお茶の用意をしにいった悠理の背を追いかけていたが、その様子を永井はなんでもないように眺めていた。

 そうして煙草に火をつけて一服したのち、相変わらずな千尋へ口を開いた。


「あいつな、一年前にここで捨てられたのを俺が拾ったんだ」

「……へえ」


 捨てられたという言葉に眉を潜めた千尋だったが、それ以上の反応はしなかった。

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