テキストサイズ

アルカナの抄 時の掟

第9章 「審判」正位置

口づけの途中で、ふと思い出す。そういえば彼女――神国からの使者は、気になる言葉を最後に呟いた。カオルを見て、「離れかけている…」と。どういうことなのだろうか。

なぜ今思い出したんだろうと思っていた時、アルバートが舌を入れてきた。舌を絡め合う、長い長いキス。やがて、唇が離れた。

「…行こうか」
アルバートが微笑む。カオルも微笑み返し、うん、と返す。

二人は離れに向かった。カオルが部屋に荷物を取りに行っている間、アルバートは玄関口で待っている。

ベッドの横に置かれているスクールバッグが、なんだか懐かしく思えた。いろいろと思いをはせながら、鞄をつかみ、肩にかけたその時――。


視界が大きく歪んだ。ぐわんぐわんと、地響きのような頭痛。

「っ……!」

今までで最も長く、激しい痛みに声も出ない。カオルは頭を抱え、その場に座り込んだ。やがて、頭痛は途切れ途切れになっていく。

鞄を取りにいっただけにしては遅い、とカオルの様子を見に来たアルバート。扉からのぞきこみ、異変に気づく。

「カオル…!?」

「アルバート…っ」

ザザ、と砂嵐のようにちらつくのは、見覚えのある風景。

「いや、だ…!戻りたくないよぉ…!!」
手を伸ばす。その手をつかもうと、アルバートも手を伸ばした。

アルバートの顔が、霞んでいく。


――そして、まばゆい光が視界いっぱいに広がった。





           第九章 完

ストーリーメニュー

TOPTOPへ