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アルカナの抄 時の掟

第9章 「審判」正位置

声のした方を見ると、いつの間にか開け放たれていた窓から、女性が顔をのぞかせていた。城まで連れて来てくれた女性だ。

「おまえは…」

「この世界で唯一中立にして不可侵、そして神聖な国――シヴァ神国、『ステラ』の代表よ。すべての公正を保つ、絶対的統制者として…この場の立会人を名乗り出るわ」
翼の生えた馬から降りると、彼女は言った。

よくわかんないけど、そんな人たちがいるんだ…。

思いがけない立会人の登場によって、両国の協約は信憑性が増した。予想以上に好条件の確約に、カオルは大満足だった。





カオルが宮殿に戻ったのは、翌日の明け方だった。馬のいななく声が、小屋から聞こえる。宮殿に入ると、アルバートが立っていた。

「ごめんね…、ただいま」

アルバートは悲愴な表情をさらに歪ませ、カオルを強く抱きしめた。言葉はなくても、気持ちが伝わってくる。

「…心配かけてごめん」
アルバートの背中に手を回し、胸に顔をうずめた。懐かしい、アルバートの体温。鼓動…。

「ばか…カオルのばか。君を危険な目に合わせないようにって思ってたのに」

アルバートは既に昨夜のことを知っているようだ。カオルを助けたあの謎の女性から聞いたのだろうか。

「…ごめんね、ちゃんとわかってるよ。もう大丈夫だから」
顔を上げ、笑んだ。

「…戻ってきてくれる…?」

「もちろん」
満面の笑みを浮かべた。

「カオル~。大好き~~」
わあん、と再びカオルを抱きしめるアルバート。

「私も愛してるよ、アルバート」
ささやくように言うと、二人は見つめあい、唇を重ねる。

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