アルカナの抄 時の掟
第10章 「世界」正位置
目を開けると、空と、白い線、そしてそれを視界の半分ほど隠す高い建物。座り込んだ地面は、固い。アスファルトだ。
…戻ってきちゃったんだ。もとの世界に…。
ガサ、と鞄が肩から滑り落ちる。目頭が熱くなり、流れ落ちた涙がアスファルトを湿らせた。目を押さえ、泣きながら立ち上がった私は、そのまま歩き始める。
やけに静かな周りに、やっと気づく。私が向こうの世界へ行く前から、ほとんど経っていないらしい。
目前のところだったから、学校へはすぐに着いた。時計を見ると、家を出てから学校に着くまで、いつもより15分ほど余計にかかっている。
それでも早いようで、友人たちはまだ来ていない。教室へ向かう途中、深見先生と出くわした。
「柊、珍しいな。…どうした?」
驚いていた先生が、さらに驚く。私の様子がおかしいことに気づいたのだろう。
「なんでも…ないです」
なんでもなくないけど、そう言うしかなかった。
「…そうか」
先生はそのまま、職員室へ行ってしまった。
悔しいくらいに穏やかで、いつも通りの日常。私とは…対照的だ。
…戻ってきちゃったんだ。もとの世界に…。
ガサ、と鞄が肩から滑り落ちる。目頭が熱くなり、流れ落ちた涙がアスファルトを湿らせた。目を押さえ、泣きながら立ち上がった私は、そのまま歩き始める。
やけに静かな周りに、やっと気づく。私が向こうの世界へ行く前から、ほとんど経っていないらしい。
目前のところだったから、学校へはすぐに着いた。時計を見ると、家を出てから学校に着くまで、いつもより15分ほど余計にかかっている。
それでも早いようで、友人たちはまだ来ていない。教室へ向かう途中、深見先生と出くわした。
「柊、珍しいな。…どうした?」
驚いていた先生が、さらに驚く。私の様子がおかしいことに気づいたのだろう。
「なんでも…ないです」
なんでもなくないけど、そう言うしかなかった。
「…そうか」
先生はそのまま、職員室へ行ってしまった。
悔しいくらいに穏やかで、いつも通りの日常。私とは…対照的だ。