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アルカナの抄 時の掟

第10章 「世界」正位置

――あれから、何日だろう。今日は高校は休みだ。私は…なんとなく外に出てる。通学路だ。…無意識に、彼を探してるのかもしれない。

あれから、気がつけば空ばかり見てる。建物に半分ほど覆い隠された空を。結構経つけど、まだ“こっち”に馴染めない。あの世界への思い入れは、思った以上に強いみたい。

でも、それも…少しずつ薄れていくのが、自分でもわかる。こうやって、忘れていくのかな…。向こうでの出来事も、彼の記憶も…彼への想いも。

思い出になっていくのかな。…それか、全部なくなってしまうかな。

彼と過ごした日々が、よみがえる。彼の笑顔が、声が、体温が。フラッシュバックする――。


…いやだ。嫌だよ。忘れたくない。愛してると言ってくれたあなたを、愛してると言った自分を…忘れたくないよ。

「バカ…バカ!好きって…愛してるって言ったくせに!!」
突然叫び始めた私に、休日の朝っぱらから何事か、と少しだけいた周りの人々の視線が集まった。

でも知らない。知るもんか。私は怒ってるんだから!

「忘れるなんてバカじゃないの!?私は忘れてないもんね!忘れてなんかあげない!っていうか忘れるアルバートがおかしい!アホ!!まぬけ皇帝っ!!」
空をゆっくりと動いていくあの飛行機に届くんじゃないかってほど、大声で叫んだ。

「……っ」
ひとしきり叫ぶと、温かいものが溢れた。

「…大好きだよ…アルバート…」
わああん、と泣きじゃくりながら、ゆっくりと歩き出す。

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