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アルカナの抄 時の掟

第1章 「運命の輪」正位置

学校中に鳴り響く鐘の音。聞き慣れたメロディーが、授業終了を知らせた。

昼休みだ。ある者は机を動かし、ある者は黙々と弁当を広げ、ある者は教室を出ていった。そして私は、何もせず机に突っ伏した。弁当を忘れたのだ。おまけに財布も。ちなみに、友人たちにはそのことはもう話してある。

「柊!」
自分の名を呼ばれて振り返ると、眉間に皺を寄せ、鬼のような顔をした男性が、眼鏡を光らせていた。なぜ呼ばれたのか、だいたい検討はついている。

「すみませんでした!!」
内容も聞かずに頭を下げる。多分、合っている…。

「…取り敢えず、こっちに来なさい」
呆れ顔の男性教師が手招きをする。私は素直に従い、教室を出る。
ついていくと、教師はある教室の中へ入っていった。見ると、『進路指導室』と書かれている。実は、ここに入るのは初めてではない。というかぶっちゃけ、何度も来ている。
慣れた様子で、教師も私も机ごしに向かい合って座る。


「柊。…一応聞くが、今日はなんで遅刻したんだ?」
ため息混じりに言った彼は、私の担任だ。確か、三十代中ほど。黒い髪が、すっきりと短く整えられている。

「寝坊しました」
短く言った。…本当は、遅刻に至るまでに色々あったのだが。

「まったく、おまえは…。なんでそう問題ばかり起こすんだ」
とうとう先生の口から盛大にため息がこぼれた。

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