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アルカナの抄 時の掟

第1章 「運命の輪」正位置

柊薫。教師も生徒も、ほとんどが私の名前をフルネームで言えるほど、この高校ではかなりの有名人だ。…悪い意味で。

先生の言う通り、私は遅刻だけでなく、他にも色々と問題を起こしていた。
体育大会では、リレーのゴール直前で転びそうになってつかんだ先が、なぜかちょうど席を離れた教頭のズボンだったり、朝礼中にポケットの携帯電話が荘厳な曲を奏で出したりと。

かつては、瞬く間に次々アクシデントを生み出す災厄の魔術師と噂され、その名を轟かせた…。


「私も別に問題児になりたくてなってる訳じゃないんですけどね。ほんとですよ。私の将来の夢は、もう決まってます。一般peopleになることです!!」
私が高らかに言うと、先生の眉間の皺がさらに深く刻まれた。

「将来の夢を語る前に今のこの状況を何とかしろ!おまえ、このままだと大学行けないぞ。それどころかそのうち停学・退学になりそうな勢いだ。本当に真剣に考えないとそろそろまずい。どうするつもりなんだ、おまえは!」
先生が息継ぎなしに一気に言い立てる。

「最近は少し落ち着いてきたが、おまえは前科が…―」「だいたいおまえは…――」などと説教が続いたのち、二度と遅刻しないと誓って何とか解放された私は、進路指導室を出た。


最近は特に目立ったことはしていないんだけどな…。それに、今日だって前をトロトロ走ってたあの自転車がいなければ、遅刻してなかったはずなのに!

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