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アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

「カオルさんってドジなのね!」
セレナは、うっすらと涙をうかべてくすくす笑った。カオルがうーんと唸る。

「ドジ…っていうかなんていうか…」

そのひとことじゃ済まないような間の悪さ…。

二人は、またセレナの私室でお茶していた。カオルがここにきて起こした最初の事件を話すと、セレナには大ウケだった。元々なんとなく冷たかったヴェキの態度がさらに冷たくなった気がする、と言うと、セレナはいっそう笑った。

「それと、運も悪いのね」

「…それだ。私、運が悪い。致命的に!」
だらりとうなだれるカオル。

いつも、うっかりやぼんやりに追い討ちをかけるようにアンラッキーを発揮してる気がする。

と、セレナがおずおずと口を開く。

「あの…カオルさん」

「ん?」

「私、今まで陛下と二人きりでお話ししたことないの。だから一度、二人きりでお会いしてみたいのだけど…」

「あ、協力するって約束してたもんね。…でも、それって私がどうこうできることなのかな」

「そこをなんとか、お願い。どうしてもお会いしたいの」
手を合わせ、懇願の目を向けてくる。

「うーん…なんとか頑張ってみる」
もう、そう言うしかなかった。

「ありがとう、カオルさん」
満面の笑顔が肩に重くのしかかる。

う……。

やる気がないわけではないが、なんとなく荷が重いカオルだった。

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