アルカナの抄 時の掟
第3章 「女帝」正位置
アルバートが部屋へ戻る少し前、ヴェキは廊下を歩いていた。講座が終わったというのに、アルバートの姿が見当たらない。終わった途端すっ飛んでくると思ったのだが。
入れ違いになって、もう部屋に戻っているのだろうか。
アルバートとカオルの部屋にもう一度戻ると、不用心にも、扉が全開だった。
「入りますよ」
扉を軽くノックし、中へ入る。と、カオルが椅子に座ったまま寝ていただけだった。
先ほどのやり取りを思い出す。
彼女は…思っていたよりも、察しがいいようだ。彼のふるまいが演技だということを、こんなにも早く見抜くとは。
恐らく重臣たちは、誰も気づいていないだろう。私でさえ、仮面の下の彼の素顔に、長い間気づかなかった。
と、ノートに書かれている文字が、ちらりと目に入った。教訓…だろうか。調理場でのことを気にしているのかもしれない。まあ、ヴェキとしても気をつけてもらった方がいいのだが。
近くにあったタオルケットをそっとかけると、ヴェキはそこを離れた。
第三章 完
入れ違いになって、もう部屋に戻っているのだろうか。
アルバートとカオルの部屋にもう一度戻ると、不用心にも、扉が全開だった。
「入りますよ」
扉を軽くノックし、中へ入る。と、カオルが椅子に座ったまま寝ていただけだった。
先ほどのやり取りを思い出す。
彼女は…思っていたよりも、察しがいいようだ。彼のふるまいが演技だということを、こんなにも早く見抜くとは。
恐らく重臣たちは、誰も気づいていないだろう。私でさえ、仮面の下の彼の素顔に、長い間気づかなかった。
と、ノートに書かれている文字が、ちらりと目に入った。教訓…だろうか。調理場でのことを気にしているのかもしれない。まあ、ヴェキとしても気をつけてもらった方がいいのだが。
近くにあったタオルケットをそっとかけると、ヴェキはそこを離れた。
第三章 完