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アルカナの抄 時の掟

第1章 「運命の輪」正位置

余裕の朝だ。
朝日が眩しく照らすテーブルで、優雅に朝食を頂く。今日は昨日とは違う。キてる。

昨日のうちに済ませておいた時間割の準備をもう一度確認して、鞄を肩にかける。

家を出て歩き出すと、爽やかな風が頬を撫でた。やっぱりいつもと違う。足取りも軽やかに、すれ違う人に心の中で挨拶する。


皆さん、日本国民の皆さん。おはようございます。お元気ですか。
お待たせいたしましたご安心ください。もう、昨日までの私ではありませんよ。ええ。本日は余裕の登校です。
私が立ち上がったからには――


と、妙なものが視界に入る。誰かが横道に立っている。

ちらりと見えたそれは、どう見ても現代人の服装ではなかった。直視しないように頬をつねりながら歩く。

痛くなかったらこれは夢、痛かったらあれは不審者。


「…不審者だ」

「不審者じゃないよ!」

慌てて横道から出てきたその男は、思ったより若かった。青年、と表現できるほどだろう。

そして見れば見るほど、彼は奇妙な格好だった。

全身のベージュっぽい色の服は、古代中国の服の型に似ているが、それとも少し違う。頭は、インド人女性によく見られる、チャドルのような布の上にターバンのようにぐるぐると布が巻きつけられているという格好で、髪の毛を一本も残さず覆い隠している。さらにその上には、羽やら何やら飾りつけられている。

「映画の撮影でもしてるんですか?」

「エイガ?なんだろう、それは」

「ああ、外国のかた…。まあいいや、先急いでるんですいません」
私は歩を早めた。

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