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アルカナの抄 時の掟

第4章 「塔」正位置

そう考えれば、合点がいく。

「…そしてここまで、伝説通り、と」
馬鹿馬鹿しいと思っていたが…。

「皇妃」

「はい?」

「結界作ってください」

「……は?」

ヴェキさん?

「通説ならあなたです。この国を守護できるのは」

いやいやいやいや。

「そんないきなり言われても」

…ちょっとそこの醤油とって、みたいなノリで言われても。

「あなたならできます」

できるか!

「無理なものは無理です!」

「あなたさっき、なんでもやると」
ギロリとにらむ。

なんでもやるとは言ってないけど…取り敢えず頑張ってみる、と言わなきゃいけない雰囲気。

「…最善を尽くします」





はい、無理です。

あれから、祈ったり、叫んだり、呪文っぽいものを唱えてみたりと思いつく限りを試してみたが、結界が補強されることはなかった。

「無理だー!!」
とうとうカオルは音を上げた。

「できます。できないと思うからできないのです」

「そういう問題じゃ…」

「そういう問題です」

そろそろ諦めてよー!

昼食の時間に食い込んでまでそれは続いたが、うまくいくことはなかった。ヴェキはさすがに諦めたのか、食後にまた再開させるというようなことはなかった。

「よ…よかった」

「なにがよかったのですか?」

「うわっ!?」

まさか、また始まるのー!?

「今日は歴史の続きをお教えします。このようなときだからこそ、知識を得るという皇妃の務めを――」

いつもの講座が始まり、カオルは数時間にわたりみっちりとしごかれた。そのためか、カオルはこの日の夜、かなりよく眠れた。





           第四章 完

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