アルカナの抄 時の掟
第4章 「塔」正位置
「陛下がこのような状態だからこそ、皇妃であるあなたがしっかりしなくてはならないんです。あなたはそんな軽い気持ちでその立場をお務めなのですか」
…この目。調理場の火事のときにも見た…優しくて厳しい目。
「それならば今すぐ皇妃の座を降りなさい。その程度の覚悟ではふさわしくない」
私を煽り、試してる。私がどうするのかを。皇妃としての私の覚悟を。
「…わかりました」
なにをすればいいんですか、と問う。
ヴェキが口を開こうとした、その時。
「ルーデン様、大変です!!」
「なにごとですか」
「黒龍が…国境に…!」
黒龍…!?
「どういうことですか」
黒龍は他国の、我が国で言うあの赤い霊鳥だ。他国の王以外の者は関所からこの国に入ることができるが、他国の守護者である黒龍は、入ることはできない。
強大な力を持つそれが不可侵を破ろうとしている。それは、この国への攻撃を意味する。
「どうも、国境には強い圧力による結界があるようなのですが、何らかの理由で部分的に弱まっているようなのです。そこを狙い、体当たりしているようで…」
この国に黒龍が近づくなど前代未聞だ。黒龍の守護国といえば、隣国の、さらに隣の国だ。
攻めようと思えば攻められる距離らしいことがこれでわかった。
これまでは、霊鳥の守護により保護されていた。だから他国に攻められなかったのだ。守護の力がなぜか弱まり、それが他国に知れ、攻められているのだ。
…このような形で伝説の信憑性が証明されるとは。
ヴェキは、バルコニーへ走った。カオルも追う。
巨大な黒い龍が、国境付近を飛んでいた。国境に近づこうとしては、圧力に押し返される様子が見てとれた。その押し返す力は、確かに弱く感じられる。
だが、なぜ。なぜ弱まっているんだ?
「…陛下の体調と、相関している?」
…この目。調理場の火事のときにも見た…優しくて厳しい目。
「それならば今すぐ皇妃の座を降りなさい。その程度の覚悟ではふさわしくない」
私を煽り、試してる。私がどうするのかを。皇妃としての私の覚悟を。
「…わかりました」
なにをすればいいんですか、と問う。
ヴェキが口を開こうとした、その時。
「ルーデン様、大変です!!」
「なにごとですか」
「黒龍が…国境に…!」
黒龍…!?
「どういうことですか」
黒龍は他国の、我が国で言うあの赤い霊鳥だ。他国の王以外の者は関所からこの国に入ることができるが、他国の守護者である黒龍は、入ることはできない。
強大な力を持つそれが不可侵を破ろうとしている。それは、この国への攻撃を意味する。
「どうも、国境には強い圧力による結界があるようなのですが、何らかの理由で部分的に弱まっているようなのです。そこを狙い、体当たりしているようで…」
この国に黒龍が近づくなど前代未聞だ。黒龍の守護国といえば、隣国の、さらに隣の国だ。
攻めようと思えば攻められる距離らしいことがこれでわかった。
これまでは、霊鳥の守護により保護されていた。だから他国に攻められなかったのだ。守護の力がなぜか弱まり、それが他国に知れ、攻められているのだ。
…このような形で伝説の信憑性が証明されるとは。
ヴェキは、バルコニーへ走った。カオルも追う。
巨大な黒い龍が、国境付近を飛んでいた。国境に近づこうとしては、圧力に押し返される様子が見てとれた。その押し返す力は、確かに弱く感じられる。
だが、なぜ。なぜ弱まっているんだ?
「…陛下の体調と、相関している?」