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アルカナの抄 時の掟

第5章 「皇帝」正位置

怪訝そうなカオルに、アルバートは考え事をやめ、顔を向ける。くしゃ、とカオルの頭を優しく撫でた。

「カオル、愛してる」
愛しげに、やわらかく微笑む。今のカオルには、これが心からの言葉なのだと、愛なのだとはっきりわかる。そしてそれを認め、受け入れることができる。与えることも。

「……私も。アルバート」
愛してる、とアルバートの頬を両手で包み、顔を近づけると、瞳を閉じて唇を重ねた。今まで注がれていた分を返すかのように、アルバートへと、唇から愛を伝えた。アルバートも応えるようにカオルの頭の後ろへ手を回し、目を閉じた。


二人の唇が離れる。とろんとした目でアルバートを見つめるカオル。愛し、愛される幸せを、改めて深くその身に感じていた。

「カオル」
アルバートが表情を引き締めた。真剣なまなざしでカオルを見つめる。

「ん」

「アルバート・マタティヌス・レイミエ。この名に懸けて、君を守ると誓うよ。…たとえ、どんなことがあろうとも」
ゆるぎないまなざしが、強い意思をもっての言葉だと告げていた。

何か大切なもののために覚悟を決めた――そんな目だった。

「…うん。信じるよ――何があっても」
静かに、アルバートの胸に身をうずめる。伝わってくる強い鼓動が、心地よかった。





           第五章 完

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