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アルカナの抄 時の掟

第6章 「月」正位置

カオルは、鼻歌まじりに歩いていた。手には着替えとバスタオル。宮殿には、アルバートやカオル専用の浴室の他に、サウナ室付きの共同の浴場があり、最近は、もっぱらそこに通っていた。

この世界にもサウナ室があったとはね~。

もちろん、共同とは言っても男湯と女湯に分かれている。うきうきと着替え室へ入ると、夕食前のこの時間には珍しく、先客らしき人がいた。長イスの上に横たわり、タオルケットをかけて眠っていた。

「もう入ったのかな」
その横を通り抜けながら、様子を伺う。ぐっすり眠っているようだ。

…きれいなひと。

目を閉じているが、整った顔立ちであることはよくわかる。金髪の長い髪が長イスから流れ落ち、今にも床につきそうなところまで垂れ下がっている。
髪は乾いているように見えるが、どうなのだろう。もう済ませたのだろうか。

まいいか、とカオルは背を向け、着替え始めた。スカートがパサリと落ちる。上の服を脱衣籠に入れ、ブラジャーに手をかけたとき。


ふっと影がかかり、後ろから手が延びてきた。その手は、そっと胸の膨らみを下着の上から包む。思わず「んっ…」とカオルが吐息を漏らす。

…まったく、いきなりこんなことするのは…。

「アルバ――」
振り向いて、固まる。先ほどの美しいひとが、カオルのすぐ後ろに立っていた。

「意外と胸大きいんだ、皇妃さま」

その声は、明らかに男性のものだった。

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