All Arounder
第19章 Tell A Lie
『待って!!!』
凛とした声が、辺りに響いた
ピタッと棒は止まり、大志の顔から離される
『屋敷に戻るから…大志には何もしないで…』
車のそばにいた黒羽は、姫の顔を覗いて尋ねた
「それは本当ですね?」
『本当だから…お願い…』
黒羽はにこりと笑うと、「引き上げましょう」と呼び掛けた
姫は黒羽の方を向く
『だから最後に…ちょっとだけ喋らせて』
「…いいでしょう」
黒羽がそう言うと、姫を掴んでいた使用人は姫を離した
体が自由になった姫は、車から下り
サク サク と野原を歩いた
そして倒れている大志のもとにしゃがみ込んだ
『…大志』
「姫…ばかやろ…何言ってんだよ…?」
体中痛んだが、無理してでも上体を起こした
『大志が傷つくの、見たくないの』
「んな勝手な都合で…屋敷に戻るだなんて…ふざけんなよ」
『…』
大志は姫の肩を掴み、ゆすった
「姫はまだ笑ってねぇじゃねぇか!!
依頼はどうなんだよ…!?」
『…』
「報酬だって…もらってねぇ!!!」
『わかってよ…』
姫のそのつらそうな表情に
何を言うべきか、わからなくなった
『報酬よりも大事なこと…あるでしょ?』