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All Arounder

第23章 Affection



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あれは、オレが事件の捜査中…

ふとしたミスで犯人を取り逃がしてしまった時のことだ





同僚からは励まされたりもしたが…

悔しくて悔しくて



ただ家では、一人椅子に座っていた





そこへ、おぼつかない足取りで、大志が歩いて来たんだ



その短い手足をいっぱいいっぱいに動かし、オレの膝に手を付くと

心配げな顔をして言ったんだ





「お口、血が出ちゃうよ」





「え…」




口を開いて初めて気づいた



自分は下唇を思い切り噛んでいたんだと



それが大志には、血が出んばかりの噛み具合に見えたんだと…






「大志、父ちゃんを心配してくれたのか?」




「うん、してくれた」




…変な日本語を使うところはさておき…




この小さくも優しい存在が



堪らなく愛しく思えたんだ…







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あの美術館で出くわした時…本来ならオレは、迷わず大志に手錠をはめていた



けれど、その時大志が言った言葉…




"…口、切れちまう…"




たったこれだけが



幼い頃の大志と重なった









やっぱり





どうしようもなく、愛しかったんだ















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