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All Arounder

第32章 Go Mad




「…確かに、最近物静かだな」


マスターは心配そうに、井上が入った部屋の扉を眺めた




「相談とか…乗ってやった方がいいか?」



「それは大志が自分で決めることだな」



マスターは井上に出した飲み物を、自分で飲んでしまった





『…』




退斗のお姉さんのお墓参りに行ったときから…


少し気にはなっていた




あたし…何か悪いことしちゃったのかなぁ…?










――――――――――








「大志」



「ん?」




辺りには何人もの警備員たちが倒れていた



その日も、とある会社のハードディスクを盗むという依頼を受けていたのだ



結局見つかってしまったが、いつものように拳で黙らせた





「いや…何でもねー…」



井上はディスクを懐に入れると、足を戻した




「何だよ?」



「何でもねー」




トボトボと歩いていく井上の後ろ姿


やっぱり、おかしい







酒場まで車で帰る途中、やはり気になるので

大志は井上に話を振った






「井上、何かあったのか?」





「別にー」





素っ気ない返事に、大志は言った



「悩んでることでもあんなら…言えよ?」



「…」




突然井上はハンドルを切り、道脇へと車を逸らした



「うわっ、危ねぇだろ!!」




「大志…」








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