All Arounder
第39章 Goddess Or Ghost
葵が持っていた時計を確認すると、もう夜中の11時だった
一体自分はどれだけ気を失っていたのか…
葵の出してくれた缶詰を腹の足しにし、その日はそこに泊まることになった
「…そういやー、ここはどこだ?」
「今さらやなぁ…あの川の近くにある小屋や。
昔誰か住んでたみたいやけど、今ではうちの隠れ家や」
葵は、あるだけ服や毛布を掴んで井上に渡した
「お前の分は?」
「もう馴れたもんや、服さえあれば死なへん」
ニコッと笑った顔は、やはり17歳
あどけない感じに、愛着が湧く
「じゃーうちは寝るわ、襲ってきたら噛み殺すし」
「…はい」
葵はそう言うと、井上の反対を向いて横になった
井上も、もらった毛布なんかを敷いたり掛けたりして、眠りに就くことに
…
いつの間にか眠っていたようだ
しかし毛布が足から出ていて、それがまた心底体を冷やすようだった
う~さみぃ…
山の中って結構冷えんだなぁ…
と体を縮こめた
そして、葵の方を不意に見てみる
「…」
肩が小刻みに震えていた
当たり前だ
毛布を被っていても、足が出ただけで寒いのに
何も無しでは体まで壊しかねない
「葵…、葵?」