狼と白頭巾ちゃん
第20章 空の花
「分かった?そう、滝だ。俺が急に手を離したら、君は水の中に落ちてしまうから、だから…、暴れないで…?」
抱きすくめながら、シンが耳元でそっと囁いた。
確かに、身を起こしたライラの下半身は水の中で、シンに支えて貰わなければ沈んでしまっていただろう。
しかし、シンの腕はライラの臍上辺りに巻かれ、あと少しその腕を上げれば、小さな二つの膨らみに触れてしまいそうだ。
背中に密着したシンの身体は熱く、逞しい腕や太ももが、ライラをすっぽりと包み込んでいる。
更に言えば、ライラが意識を取り戻したとき、シンは自分の身に何をしていたのか。
意識すればする程に、ライラは恥ずかしくて居た堪れない気持ちが強くなった。
けれど、がっちり抱き締められ、ライラの力では離れられそうにない。
「わ、分かった!シン、分かったから…!は、恥ずかしい…から、は、離し、てぇ…」
この状況から逃れるには、シンから離して貰うしか無い。
ライラは耳まで真っ赤になりながら、訴えた。
「離しても…、大丈夫?」
シンが心配そうに顔を覗き込んできた。
「だだっ、大丈夫!私、泳げるから!大丈夫だから!」
顔を見られるのが余りにも恥ずかしくて、ライラは目をギュッと瞑りながら、訴えた。
それでやっとシンの腕の力が抜けたので、ライラは慌てて首から下を水に漬けた。
急いで対岸まで泳ぎ、滝壺の縁に手を掛けると、そこでライラは漸くほっと一息着くことが出来たのだった。