狼と白頭巾ちゃん
第20章 空の花
シンはライラをじっと見詰めていた。
抱いていた腕の力を緩めた途端、逃れるようにして対岸へと泳ぐライラを。
そして、そのまま何も言わずに、固まってしまったライラを。
徐々に身体を水中へと沈めてゆく姿に、一瞬手を伸ばしかけたが、掛ける言葉が見つからず降ろした。
(俺は…、何て事を!)
後悔の念が渦巻いても、犯してしまった過ちを、今更無かった事には出来ない。
(ライラが無防備だったのは、俺を信用してくれていたからだったのに…!何も知らない彼女を、俺は…‼)
ライラを襲った時、シンは獣の本能に負け、理性は欲望に勝てなかった。
ライラが欲しかった。
彼女の全てが欲しいと思った。
キスをしても足りず、身体のどこを触っても満足出来ず。
香しい蜜がとろとろと溢れるライラの蜜壺に自分の男根をねじ込み、幾らでも欲を吐き出したいと思った。
けれど触れる身体は、どこも細くて柔らかくて…。
止めたくても止められない欲情を抱えたまま、それでも愛しいライラを傷つけることなど出来なかったシンは、必死で自分を抑えようと藻掻いた。
ただ…。
シンに出来たのは、ライラの身体を傷つけないよう出来るだけ優しく扱う事と、まだ熟していない彼女のそこには凶器でしか無い自身を入れずに終わらせること…、のみであった。
シンは確かに、ライラの身体は優しく扱った。
しかし、心はそうでは無かった筈だ。
嫌がるライラの訴えを無視して、まだ知らない感覚を、無理矢理彼女に植え付けたのだから。
そんなシンに…、今のライラに掛ける言葉など、見つかる筈も無かった…。