狼と白頭巾ちゃん
第20章 空の花
(………ちょっと、寒いかも…)
長い時間、二人は滝壺にいた。
その間ライラはずっと冷たい水に浸かっていて。
流石に思い出し赤面した時には熱く感じていた体温も、長く浸かれば浸かるほど冷めていった。
今は完全に平静となっていたライラには、滝壺の水は氷のようにも感じられた。
実を言えば、早く水から出たく思ってはいたのだが、いかんせんライラには今、着るものが無かった。
(このままだと、風邪を引いてしまうかも…)
そう思い始めると、身体が素直に反応する。
途端に身体がぶるぶると震えだし、口を開けると歯がカチカチと鳴った。
折角雨を凌いでも、こんな事で体調を崩してしまっては意味がないと思い、ライラは勇気を振り絞ってシンに声を掛けることにした。
ただ、シンのほうを向くことは、まだ恥ずかしくて出来なかったのだが…。
「……あの…、シン…?」
「………………」
(あれ?)
声が小さくて聞こえ無かったのだろうか、シンからの返事は無かった。
それで、ライラはそぉっとシンがいるほうに目を移し、驚いた。
シンが、音も無く消えてしまっていたのだ。