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狼と白頭巾ちゃん

第20章 空の花

(いつの間に⁈全然気付かなかった…)


辺りをキョロキョロ見回してみても、シンの姿はどこにも無かった。


急に、切ない気持ちになる。


(何も言わずに居なくなるなんて…。どうして?……! もしかして私、嫌われたのかも…)



思えば、ライラは恥ずかしさからシンを押し退けてその腕から逃れ、しかもその後は無言で、シンのほうを向いてすらいなかった。


(私が気が付いた時、シンは優しく身体を洗ってくれていたのに…)



冷静になった今なら分かる。

あの時、野原でシンの腕に抱かれ、身体を弄られて、自分の身体は熱を持ち、汗ばんでいた。

きっと汗でべたつく身体を綺麗にしようと、シンはここに運んだのだ。


(なのに私は自分の事ばかりで…)


「シン……」


きっと嫌われたんだ…、と、確信めいた想いが強まり、ライラは居た堪れず、シンの名を呟いた。











「……呼んだ?」

「え?」


はっと顔を上げると、そこにはシンがいた。


その腕に、ライラの服を大事そうに抱えて……。

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