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狼と白頭巾ちゃん

第20章 空の花

「シン!」


ライラは嬉しくて叫んだ。

てっきり自分の態度に愛想を尽かして、何処かに行ってしまったと思っていたシンが、今自分の服を持って立っている。

取りに行ってくれてたんだと思うと、安堵の気持ちがいっぱいで、ライラは、つい大きな声を出してしまったのだ。


「良かった。シン、怒ってどっかに行っちゃったのかと思ったよ~」


嬉しくて、にこにこしながら話し掛けた。


けれどシンは困ったような表情で、ライラからふいっと顔を背けた。


「シン?」

「……………」

「どうしたの?シン」

「……………ろ」

「ん?なに?」


声が小さくて聞き取れず、ライラは首を傾げて聞き返した。


「…怒るべきなのは君だろ…?…なんで、笑ってるんだ…」

「え?」


シンは絞り出すように声を出した。


「俺にあんな事されて…。嫌だったんじゃ無いのか?なのに、なんで笑ってる…?」


「それは……」




何故と問われても、ライラには直ぐに答えることが出来なかった。

確かにシンの行為自体は無理矢理なもので、その点に関して云えば、ライラは怒っていた。

けれどそれは、恥ずかしさからくるものが大半を占めていて。

行為自体が嫌だったのかと問われると、必ずしもそうでは無かったような…。

淫らな行為であることは、流石のライラにも分かったが、気持ち悪くも無かったし、シンは優しく触れていたようにも思う…。


今ハッキリと言えるのは、シンが側に居てくれることが、嬉しい、ということだ。



だからライラは、恥ずかしさを隠して明るく言った。


「シン?私…、あなたがしたこと、嫌じゃ無かったと思うよ?」

「⁈」

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