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狼と白頭巾ちゃん

第20章 空の花

ライラは、シンが少し離れた場所で後ろ向きに座ったのを確認すると、急いで水から上がった。

優しく吹き過ぎる風も、今は冬の風ほどにも冷たく感じられる。

ぶるりと身震いし、早く服を着なければと手に取ろうとしたところで、固まった。

まずビッショリと濡れた身体と髪を乾かさなければ、服が着れないということに気付いたのだ。


(でも、拭くものなんて無いし…)


少し考えて、ライラは服の中からエプロンを探り取った。


(どっちにしても、髪が乾かなきゃ家には帰れないし。まだここに暫く居るんだから、干しとけばいいや)


思いながら急いでエプロンで身体を拭い、次に結んでいた髪を解いた。

そして、乱れてぐちゃぐちゃになっていたおさげを丁寧に剥いたあと、水を絞り、頭の上で器用におだんご状に纏め上げた。



それから漸く服に腕を通すと、まるで春の陽だまりのように温かで…、ライラは驚いた。


(シンが温めてくれた…?)





それは冷え切っていたライラの身体をじんわりと温め、同時に心までも温めてくれるようだった。

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