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狼と白頭巾ちゃん

第20章 空の花


「もう行かなきゃダメ?もうちょっと一緒にいたい…」


後少しで小道に着くというところで、ライラはシンの首にしがみつき訴えた。

顔をシンの胸に埋め、控えめに懇願する姿がなんとも愛くるしい。

本音を言えば、シンもライラともっとずっと一緒に居たい。

片時も離さず、誰の目にも触れさせない場所で、思う存分愛を語り、語られたい。



しかしシンは、しがみついて離れようとしないライラの身体をギュッと抱きしめたのち、屈むようにしてそっと下ろした。

そして、刹那げな表情で見詰めてくるライラの、やわらかな頬を指ですりすりと撫でて、苦笑した。


「俺も…、ホントはライラと離れたく無いよ」

「なら、もうちょっとだけ…」

「でも、君は帰らなきゃ。また明日も会えるよ。それから…」


「それから…?」

「今夜も」




「…今夜?」

「あぁ。君にどうしても見せたいモノがあるんだ。だから、迎えに行くから、窓は開けておいてくれないかい?」


「っダメ!誰かに見つかったらどうするの⁈」



こんな事をシンが言い出すなら、もっと一緒にいたいだなどと言い出さなければ良かった、と、ライラは思った。

しかしシンはくすっと笑って、言葉を続けた。


「ダメだよ。あと一回だけなら村に行っても良い筈だ。そういう約束だったろう?ライラ」

「だっ…、でも…」

「今日は新月だから、丁度良いんだ…」

「え?新月…?」



確かに新月の晩なら、シンの姿は闇に紛れやすい。

月が明るい夜だと、彼の姿は月の明かりに照らされて見つかる可能性が高まってしまうだろう。

けれど…。



尚もシンを説得しようと、口を開きかけたライラの唇を、シンは自分の唇を重ねて塞いだ。

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