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狼と白頭巾ちゃん

第20章 空の花

暗闇に、二つの緑の瞳だけが浮かんでいる。


「シ…⁈‼」


大声を出しそうになり、慌てて両手で口を塞いだライラは、そうっと手を外して小声で言った。



「ホントに来たんだ…」

「あぁ。来るって言ったろ?」


くすっと笑ってそう答えると、シンはベッド脇に降り、ライラへと手を伸ばした。


「さ、行こう」

「うん…」


伸ばされた手に恐る恐る手を伸ばすと、シンはそっとライラを向かい合わせに抱きかかえ、窓から音も無く飛び降りた。


辺りは民家の灯りも全て消え、暗闇と静寂に包まれている。

空には細い月が中空にあり、その周りを輝く星達が飾っていた。

僅かに月の光が届くなか、シンはまるで風のように走った。

ライラは、こんな暗闇でも道が分かるのか聞きたかったが、あまり声を出してはいけないかもしれないと、ただ黙ってシンにしがみ付いていた。



それから、走っても走っても、シンの肩越しの景色は闇でしか無く、その吸い込まれそうな大きな闇が少し怖くなり、ライラは目を閉じてシンの肩に頭を伏せた。







どれくらい走ったのか、急にシンが立ち止まり、ライラをそっと下ろした。


「着いたよ…、ライラ」


そうっと目を開けるが、辺りはやはり闇に包まれている。

ただシンの輪郭だけが、周囲より黒く、ライラは心細くてシンの腕にしがみ付いた。

この手を離してしまったら、自分の存在すら、あやふやになってしまうような心細さだった。

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