狼と白頭巾ちゃん
第23章 選び取る明日
朝食を作り終わる頃になっても、なかなかライラが起きてこないので、母親は部屋に向かって声を掛けた。
「ライラー、いつまで寝てるの⁈そろそろ起きなさーい?」
まだ眠りの中にいるのか、ライラの部屋からは何の返事も返ってこない。
「んもぅ、あの子ったら…」
まだまだ子供なのねぇ、と、困ったような笑みを浮かべながら、ライラの部屋へと向かう。
コンコン…
ノックしても、返事は無い。
「ライラ?入るわよ〜」
言いながら、カチャリとドアを開ける。
部屋に入り、ベッドを見るが、そこにライラの姿は無かった。
「あら?おかしいわねぇ、もう出掛けちゃったのかしら…?」
最近のライラは毎日、朝食もそこそこに家を飛び出していっていた。
しかし、今朝は朝食すら食べずに出掛けてしまったのだろうか…?
ふと部屋を見渡し、母親は、小さな異変に気が付いた。
母親の目に留まったのは、机だった。
いや、正確には、机の上にある物に、だ。
母親は机に近付いた。
すると、何処からか集めたのか、最近ライラが机に飾っていた木の実や石などが跡形も無く消えており。
代わりに、いつも被っていた白い頭巾と、一枚の紙片が置かれている。
奇妙な不安を覚えた。
急いで、折り畳まれた紙片へと手を伸ばす。
母親は、最近妙に大人びた表情を見せる娘のことが気になっていた。
「まさか……⁈」
呟きながら、震える手でカサカサと紙片を開き、そこに書かれた文面を、目で追ってゆく。
追うごとにその目は見開かれ、紙を持つ手がわなわなと大きく震え出す。
「そんな…、そんな……」
うわごとのように呟きながら、最後まで読み終えると、母親は、その場にガタリと腰を落とした。