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狼と白頭巾ちゃん

第14章 無意識の誘惑

ライラが去って行ったあとも、その場からシンは動けなかった。

走り去ったためか、余計辺りに振りまかれたライラの残り香が、彼を動けなくさせていた。

それは、獣の本能を呼び起こし、彼を一匹のオスへと変化させてゆく。

身体の芯から湧き上がってくるどろりとした熱は、シンが呼吸をするたびに脈を打ち、徐々に彼の意識を奪いながら身体全体に広がってゆく。

浅い呼吸を繰り返しながら、微かに残った理性でシンは首を振り、火照りの増してゆく身体を落ち着かせようと、顔を上げ深く息を吸い込んだ。

…しかし、それが不味かった。

鼻腔一杯に拡がったライラの匂い。

シンはカッと目を見開き、そのままその匂いに酔いしれてしまった。






…そして、シンの理性の緒は、音を立てて千切れた。

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